Call of Unread Books

なんだか呼ばれてるきがする

川口淳「『竜華空音日記』の翻刻――明治真宗大谷派改革運動の記録――」(『同朋佛教』54, 2018-07)

 同僚の真宗学研究者、川口淳さんより抜刷を頂きました。私も微力ながら翻刻に協力しました。要は僧の日記なんですが、非常に興味深い資料です。日記の筆者の龍華空音(りゅうげ・くうおん)は、波瀾万丈、起伏に富んだ人生を送った人物のようです。私は今回初めて知りました。川口さんの論文(2018-03)によると、腐敗していた教団にたいし、門徒やメディアを巻き込んで改革を訴えて、反対に逮捕されたり除名されたりし、のちに再評価されるようになったそうです。清沢満之に育英教校への入学を勧めたともいいます。

 

 資料の意義については川口さんが以下のようにまとめておられます。

①明治二十四年を中心におこなわれた真宗大谷派改革運動の管見のかぎり唯一の日誌であること、②真宗大谷派の異安心史の解明にも寄与する史料であること、③現在確認することが困難な新聞雑誌(例えば『時務日報』など)に投稿したと考えられる原稿の貴重な書写があること、④本山へ陳述した書状の記録が書写されて残されていること、⑤真宗大谷派の教団史を描写する上で門信徒と末寺の関係や交流を描く史料であること

川口淳「『竜華空音日記』の翻刻――明治真宗大谷派改革運動の記録――」(『同朋佛教』54, 2018-07)※引用に際して誤記を訂正(事務日報→時務日報)

 この③投稿の書写には、獄中で自らの正当性を訴えた漢詩が含まれます。『〈獄中〉の文学史――夢想する日本近代文学』を再読しているところでしたので、翻刻の際おもしろく読みました。

 〈獄中〉の文学史: 夢想する近代日本文学

 ところで、3月28日に『〈獄中〉の文学史』でシンポジウムをやりますのでよろしくお願いいたします。

シンポジウム開催のお知らせ:反響する〈獄中〉――副田賢二『〈獄中〉の文学史 夢想する近代日本文学』への応答 - 近代文学合同研究会info

 

  この日記が伝える宗派改革運動の意義については、川口(2018-03)によると次のとおりです。

 明治二四年改革運動は、宗門の役員の専横や財政紊乱を指摘し、財政や宗政の透明化のために僧侶と信徒の議会制を主張した運動であり、自由民権運動の影響や帝国議会開設直後の機運と関連していると考えられ、その時代の象徴的な運動である。ただし龍華らの主張は、寺務所には過激な変革とされ受け入れられなかった。

明治二四年の真宗大谷派改革運動 ー龍華空音を起点としてー
川口 淳
『大谷學報』 97(2)15-38, 2018-03

 ほかにも同論文には国友重章が「『日本』と『東北日報』の間に、愛知にて伊藤春太郎らの『時務日報』の主筆者となった可能性が高い。ただ國友重章が改革運動に参加したかはわからない。龍華や春太郎は上記の人物らと『時務日報』を発刊し、それが改革運動論を拡張・展開する役割も果たしたと考えられる」とあります。