Call of Unread Books

なんだか呼ばれてるきがする

漱石について新資料を刊行しました

 夏目漱石について、新資料を刊行しました。漱石は英国留学から帰国して、東京帝国大学で講義を行いました。その講義で最初に述べたと考えられる「序論」が、学生森巻吉の受講ノートに書き取られていた! というものです。

 下記の通りウェブ公開されています。貴重な資料の閲覧、掲載、公開を許諾してくださいました金沢大学附属図書館、東京大学総合文化研究科・教養学部駒場博物館に御礼申し上げます。

 

新資料・漱石『文学論』講義の序論「外国語研究の困難について」ーー森巻吉受講ノートからの影印・翻刻と解題ーー
服部徹也、樋口武志
三田國文 (62) 44(1)-24(21) 2017年12月

http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00296083-20171200-0044

 

 

 「新資料」といっても、受講ノートの所在そのものは、『文学論』の文庫解説で亀井俊介先生が言及していらっしゃいました。

文学論〈下〉 (岩波文庫)

 私は森巻吉ノートの中味を読んで、他の学生の受講ノートと比べて分析してきました。他の学生のノートについては、下記の論文で紹介しました。

帝大生と『文学論』――漱石講義の受講ノート群をめぐって――
服部徹也
近代文学合同研究会論集 (12) 28-50 2016年1月

今回紹介する「序論」が漱石の発言の記録とみて間違いないだろうという判断のプロセスは、また別の論文で示しています。

 『英文学形式論』講義にみる漱石の文学理論構想――「未成市街の廃墟」から消された一区画――
服部徹也
國語と國文學 94(10) 56-71 2017年10月

今回は、それをふまえて、「新資料」として「序論」を多くの方にアクセスしやすいように紹介することが目的です。資料の画像のほか、翻刻、日本語訳を付けました。また「序論」の内容がもつ意義(留学や『文学論』、創作との関係)の一端について解題を付しました。翻訳は、友人の翻訳家、樋口武志さんにお願いしました。

(樋口さんの訳した本の例)

異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養サリンジャー (-)

 

 漱石の留学から大学講師、そして創作へ至る過程は、まだまだわからないことだらけです。私は講義を中心に研究していますが、いわゆる「文学論ノート」(漱石全集〈第21巻〉ノート)の研究もまだまだ進んでいません。ぜひご関心を持たれた方は、一緒に調べていきましょう。